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ルールは日々を守るため

綴と同棲するにあたって、いくつかのルールを決めた。
 
1. こまめに連絡をする。
2. 家事は綴メインだけど、できることはやる。
3. 一緒に過ごせる時間を大切にする。
 
ざっとこんな感じ。
1つ目は、帰り遅くなるとか夕飯いらないとか、そういう連絡は早めにするって約束。
2つ目は、俺の「同棲するなら綴ばかりに負担かけられないでしょ?」って意見と綴の「至さんは働いてきてるし家事は俺がやるんで」って意見の間を取った形。
最後のは、綴は「いつまで続くかって感じっすけどね」って笑ってたけど…俺は割とマジ。
ゲームほぼ寮に置いてきたからね?
数年前の俺からしたら天変地異って感じ。
でもまぁ、ゲームより熱中できる相手が見つかったってことで…恥ずいから綴には言わないけど。
 
 
 
さて、同棲して2ヶ月は順調に進んだ。
家事も、食器を洗うのは俺の仕事になったし、他にもちょいちょい手伝ったりするようになった。
一緒に過ごす時間も今まで以上にとれるようになった。
つまりはまぁ、順風満帆って感じだったわけで。
 
 
 
いや、魔の3ヶ月ってマジであるんだな。
同棲してから初の喧嘩発生。
事の始まりは先週あたりから始まった俺の繁忙期。
残業続きだし家に帰るのが日付変わる頃だったりする日もあるぐらい。
先寝てていいよって連絡しても、綴は起きて待っててくれて、ご飯温め直してくれたり風呂入れてくれたり献身的に世話を焼いてくれる。
嬉しいし、ありがたい。
だけど、朝は俺より早く起きて弁当作ってくれて、家事もしつつ大学行って課題してさらに脚本書いて…どう考えてもキャパオーバー。
現に目の下には濃いクマできてるし。
それは流石にまずいだろってことで「今日はほんと寝てていいから」と連絡を入れておいたんだけど…いつもなら何かしら返事があるのに既読スルー。
うわ、俺なんかやらかしたか?って思いながら深夜に帰宅すると、綴はベッドで寝てたから、安心して俺も飯温めて食べてシャワーを浴びて寝た。
 
 
次の朝、俺が起きると机には弁当と「寮に行きます」というメモが置かれてて、綴はいなかった。
何か急ぎの用事でもあったんだろうなと思って仕事に行き、昨日よりは早めに帰ってくると、机にはラップのかかった夕飯とメモ。
メモには「しばらく寮にいます。ご飯は作りに帰るんで」と…。
これは、間違いなく避けられてる。
すぐに家を出て寮へと車を走らせる。
寮に駆け込むと真澄が出てきた。
「アイツめんどくさいことになってる」なんて言うから慌てて談話室に駆け込むと、ソファに膝を抱えて座る綴と、その周りでオロオロする咲也とシトロン。
そして俺に視線を向ける先輩の笑顔がこわい。
綴に向き直って話しをする。
「綴…ごめんな」
「別に至さんは悪くないんで」
「そんな訳ないでしょ、俺の事避けてる」
「違う…それは、俺が悪くて…」
頼みの綱の先輩を見ても首を振るだけで、どうやら誰にも訳は話していないらしい。
「…俺が言ったこととかしたことで、何か悩んでるんでしょ?」
「……」
「無言ってことはそういうことだよな。聞かせてくれない? 悪いけど俺ピンと来てなくてさ」
しばらくして口を開いた綴の一言。
「……至さんは、俺いなくても平気っすもんね」
一斉にみんなの目が俺に向く。
いやいやいやいや、俺が今一番困惑してるから。
そんな訳ないだろってすぐに否定したい気持ちを抑えて「どうしてそう思ったの?」と聞くと、綴は「だって…先寝てろって」と俯いたまま呟く。
やっと繋がってきた。
なるほど、俺の気遣いがかえって不安にさせていたらしい。
「綴…俺は綴の身体が心配で、少しでも休んでほしかったんだよ。家事も学校も脚本もしてて、疲れてるのに俺に合わせて早起きして、夜も待っててくれてるでしょ?」
誤解を解いていくようにゆっくりと伝える。
すると、綴も少しずつ話してくれる。
「俺は、最近全然一緒に居られてないから…少しでも一緒にいたかったんす。でもそれ俺だけなのかなって思ったらなんかすごい悲しくなって」
「それは俺もだよ。だからなるべく早く仕事終わるように最近詰めてて…って、言い訳だな」
「すいません、こんなの駄々こねてるだけだって分かってるんすけど…」
「いや、綴の思ってることはちゃんと全部教えてほしい。言われなきゃわかんないことっていっぱいあると思うからさ」
しゅんとしている綴を見て、ちゃんと言ってないのは俺もだなと反省する。
だから、今思っていること…
「俺は綴がいないとダメだし、少しでも会いたいのは一緒。連絡つかなくて寂しかったし…でも、綴が大事だから…綴にももう少し自分の身体大事にして欲しい」
俺の想いを包み隠さず伝える。
それから周りの目は気になるけど、綴の耳元で「愛してるからさ」と付け加える。
すると一気に綴の顔が赤くなった。
こういう所が可愛いんだよなって思っていたら、真っ赤な顔のまま「それ、俺もっすから!」なんて言うもんだから…俺まで顔が熱くなった。
 
 
「痴話喧嘩も程々にしろよ?」
「たまには遊びに来てくださいね!」
「ほんと、人騒がせで迷惑」
「マスミ、一番心配してたネ」
家族のような彼らに賑やかに送り出されて、一緒に二人の家に帰る。
家に着いてから、一瞬たりとも俺から離れようとしない綴が可愛くて愛しくて。
幸い今日は金曜だし、たっぷり甘やかせるから。
忙しかったこの数日間を埋めるように、たくさん話をしよう。
それから、二人のルールをいくつか加えよう。
 
1. 不安なことや悩んでること、思ってることはちゃんと伝える。連絡もこまめにする。
2. 家事は綴メインだけど、できることはやる。綴も遠慮しない。
3. 喧嘩しても「おはよう」や「おやすみ」、「いってらっしゃい」や「おかえり」はちゃんと言う。
4. 一緒に過ごせる時間を大切にする。でも、お互いの身体はちゃんと大事にすること。
 
これから先も、二人で過ごすために。
幸せな日々が、続いていくように。
明るい未来に、繋がっていくように。
今はただ、愛しいぬくもりをそっと抱き寄せた。

アンソロジーへの参加は初めてです。書いたものを公開することも今までほとんどなく、見ていただいた方にどのように映るのかドキドキしています。少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

 

珠桜

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